現行の社会福祉法人会計基準(平成28年厚生労働省令第79号)では、計算書類の作成に関して、内部取引の相殺消去をするものとする(第10条)とされています。しかし、旧会計基準(社援第310号 社会福祉法人会計基準の制定について(平成12年2月17日))には、内部取引を相殺消去するという考え方はなく、そのまま合算されていたこともあり、現在においても、時折、内部取引の相殺消去がされていない社会福祉法人の計算書類を見かけることがあります。
内部取引の相殺消去が求められる理由は、次のとおりです。すなわち、計算書類上、自らに対する収益(収入)・費用(支出)・債権・債務が表示されると、これらの金額が両膨らみになってしまいます。しかし、これは、あくまで組織内部の価値の移動であり、実態としては何もないのと同じことです。このような内部取引について、現行の会計基準では、計算書類上、何もなかったような状態にするために、相殺消去が求められているのです。
そして、社会福祉法人の計算書類は、法人全体を事業区分、拠点区分及びサービス区分の階層に区分して作成されますので、内部取引の判断もそれぞれの階層に応じて判断する必要があります。例えば、社会福祉事業内に複数の拠点があり、これらの間での取引がある場合、法人全体及び社会福祉事業区分では内部取引ということになりますが、拠点区分では外部取引ということになります。
また、拠点内に複数のサービス区分があり、これらの間で取引がある場合には、拠点区分の段階で内部取引ということになります。
このように、内部取引は計算書類の作成におけるそれぞれの階層ごとに段階的に認識され、相殺消去されることになります。下表は、社会福祉法人において作成される計算書類と相殺消去される内部取引の関係をまとめたものです。
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資金収支計算書 |
事業活動計算書 |
貸借対照表 |
相殺消去される内部取引 |
法人全体 |
法人単位 |
法人単位 |
法人単位 |
- |
法人全体の |
資金収支内訳表 |
事業活動内訳表 |
貸借対照表 |
事業区分間取引 |
事業区分の |
事業区分 |
事業区分 |
事業区分 |
拠点区分間取引 |
拠点区分 |
拠点区分 |
拠点区分 |
拠点区分 |
- |
拠点区分の |
拠点区分 |
拠点区分 |
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サービス区分間取引 |
また、内部取引の相殺消去には、事業区分間の繰入金等だけではなく、外部との取引と同様に収益(収入)・費用(支出)として処理した取引(例:就労支援事業の製造物品を他の拠点区分において給食として消費した場合)も対象となりますので、注意が必要です。
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