日本公認会計士協会は、2019年5月23日、公会計委員会研究報告第23号「地方公営企業の会計の論点と方向性」を公表しました。この研究報告は、日本公認会計士協会公会計委員会において、地方公営企業における財務情報のマネジメントへの活用状況、地方公営企業における財務情報の開示の在り方等についての調査・研究を行った結果、取りまとめられたものです。
当コラムでは、3回に分けて、研究報告の内容をご紹介いたします。
今回は、第1回「公営企業における財務情報をマネジメントに活用する方法提案」(前半)です。
地方公営企業に関する総務省の主な取組として、地方公営企業法の適用範囲の拡大について、2019年1月の通知により、これまで「できる限り」とされていた人口3万人未満の市区町村の下水道事業及び簡易水道事業に対しても、2023年までに地方公営企業法の適用が要請されています。また、地方公営企業が将来にわたって安定的に事業を継続していくための中長期的な基本計画、すなわち「経営戦略」の策定を2020年度までに行うことが各地方公共団体に対して要請されています。
この点、「経営戦略」の策定にあたっては、財務情報を経営の現状分析のみならず、将来の経営実態を明らかにするという視点が必要であり、法適用により整備される固定資産台帳等の情報が将来の経営判断材料として活用されることについて十分な認識が必要といえます。しかし、法適用の作業に携わる現場の職員は、その作業に追われ、本来的な目的を見失いがちとなり、作業のモチベーションがなかなか上がらない状況にあるのではないか、という課題が指摘されています。
この課題に対応するため、「法適用」や「経営戦略」のマネジメントにおける意義や役割を改めて周知するとともに、現在及び将来の経営実態を歪めずに表示し、企業内部のみならず対外的にも積極的に説明を行う必要があるとされています。
また、単年度予算主義をとる地方公共団体の中で、毎年度の予算策定が近視眼的な観点で策定され、中期的な計画である経営戦略を無視したものになっていないか、という課題が指摘されています。
毎年度の予算は経営戦略で示した将来情報を鑑みつつ編成されることが必要ですので、中期的な投資計画と裏付けとなる財源の整合性に配慮することが求められます。また、経営戦略の数値と実態がかい離した場合には、適時に見直しを図るべく、PDCAサイクルを機能させることが必要とされています。
次回、第2回「公営企業における財務情報をマネジメントに活用する方法提案」(後半)に続きます。
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