学校法人のガバナンス改革の動きについては、国による私立学校法の改正や学校法人による寄付行為の見直し等により改革が進められていくことになりますが、実務上は、ガバナンス・コード等で補完する必要があります。
ガバナンス・コードとは、統制、統治又は管理(ガバナンス)する原則又は指針(コード)のことで、民間企業では、2015年に金融庁と東京証券取引所が共同で策定したコーポレートガバナンス・コード(企業統治に関する指針)が知られています。このコーポレートガバナンス・コードは、法的な強制力や罰則はありませんが、原則上場企業は従うことになっています。
一方、学校法人においてもガバナンス・コードへの対応が求められつつあります。まず、日本私立大学連盟は、令和元年6月に「日本私立大学連盟 私立大学ガバナンス・コード【第1版】」を策定しました。本ガバナンス・コードの「はじめに」では、「企業において議論されることが多いガバナンスという概念ではあるが、私立大学においても、その公共性に鑑み、教育研究を充実発展させるという崇高な使命を果たし、社会からの期待に応えていくために必要不可欠なものである。」とガバナンス・コードの必要性を述べており、会員である私立大学にその遵守を求めています。
この点、法的な強制力や罰則はないが、上場企業に対して遵守を求めているコーポレートガバナンス・コードとは、性質が類似しています。なお、個々に私立大学においては、本ガバナンス・コードを「学校法人○○大学ガバナンス・コード」に置き換えることにより、大学独自のガバナンス・コードを策定して公表することもできます。
次に、日本私立大学協会も、平成31年3月に「日本私立大学協会憲章 私立大学版ガバナンス・コード」<第1版>を策定し、公表しています。本ガバナンス・コードは、私立大学に遵守を求めるものではなく、私立大学の自律的な取組みとして活用されることを想定した一種のひな形としての性格を有していると考えられます。この点、前述の「日本私立大学連盟 私立大学ガバナンス・コード【第1版】」と性格が異なっています。
最後に、大学監査協会は、令和元年7月に「大学ガバナンスコード」を公表しています。本コードでは、その3つの役割を提示しています。第1にチェックリストとして利用することが期待されていること、第2に想定される標準的な対応を示したものであるが、機械的遵守と求めたり、強制したりするものではないこと、第3に標準的な対応と異なる選択をした場合には、その理由をステークホルダーに対して説明することが期待されることを述べています。
以上、私立大学においては、いずれもガバナンス・コードも大学のガバナンスを検討する際に役立つものと思われます。
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