当コラムでは、2019年5月23日に公表された日本公認会計士協会公会計委員会研究報告第23号「地方公営企業の会計の論点と方向性」をご紹介していますが、今回は、その第3回「現行の地方公営企業会計基準の改善提案」です。
地方公営企業においては、2014年度から新たな会計基準が導入され、新基準での予算決算対応については定着している一方、地方公営企業を取り巻く環境の変化は激しく、民間委託の拡大や広域化など様々な動きが出てきています。このような状況のもと、研究報告では、①予算(予定値)と実績の比較、②セグメント情報の充実、③地方公営企業と地方独立行政法人の財源部分に関する会計処理の相違、④今後必要となる会計基準の整備の4項目について、マネジメントに活用するための財務情報についての課題及び対応策を提案しています。
①予算(予定値)と実績の比較
地方公営企業の予算においては、見込みとして予定貸借対照表や予定損益計算書が作成されていますが、現状では、決算上、財務諸表(貸借対照表及び損益計算書)の科目単位での予算と実績の比較は行われていません。この点、財務諸表の科目ベースで予算(予定値)・実績対比を行うことにより、財務諸表利用者において有益な情報となるのではないかとされています。
②セグメント情報の充実
現状では、総務省から例示された事業単位を単位として区分したセグメント情報が開示されているケースが多いですが、地域別情報など利用者により有用な視点でのセグメント情報の開示を促すような指針を設けてはどうかとされています。
③地方公営企業と地方独立行政法人の財源部分に関する会計処理の相違
償却資産取得のために受け取った負担金の会計処理について、地方公営企業では営業外収益(長期前受金戻入)に計上されるのに対し、地方独立行政法人では、営業収益(資産見返運営費負担金戻入)に計上される場合があり、地方公営企業から地方独立行政法人に法人形態を変更した前後で予算決算の状況が大きく異なる要因となることから、地方公営企業における財源の会計処理について、会計処理の原則を踏まえ開示区分を検討する必要があるとされています。
④今後必要となる会計基準の整備
地方公営企業の抜本的な改革の取組が進む中で増加が見込まれる完全民営化、民間企業への事業譲渡、コンセッション等を見据え、これらに対応するための会計基準の整備の必要性について指摘されています。
これまで、3回にわたって、研究報告の概要をご紹介してまいりましたが、この研究報告は地方公営企業の実務や地方公営企業会計制度の見直しに関する議論に寄与することが期待されています。
弊法人といたしましても、地方公営企業の法適化の業務などを通じて、地方公営企業会計のあるべき姿を検討してまいりたいと考えております。
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