公益法人は、毎事業年度開始前に事業計画書等を作成し、行政庁に提出しなければなりませんが、事業計画書及び収支予算書に加えて、「資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類」を提出する必要があります。
この「資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類」は、借入れ及び設備投資の予定の「あり」、「なし」にチェックを入れ、予定がある場合には、その内容を記載する様式になっていますが、あまり深く意識せず、「なし」にチェックを入れた書類を作成し、提出されている法人も多いのではないでしょうか。
公益法人は、認定法施行規則第30条において、収支予算書は、経常収益、事業費、管理費、経常外収益、経常外収益の区分を設けて表示しなければならないとされていることから、正味財産増減計算書と同様の損益ベースで収支予算書を作成することになりますが、固定資産の購入支出や金融機関からの借入が表示されない損益ベースの収支予算書を補完するため、「資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類」の作成が求められています。
ただし、この「資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類」には、すべての資金調達や設備投資を記載するのではなく、法人において「重要」と判断するものについて記載することとされています。
この点、一般法人法では、理事会は「重要な財産の処分及び譲受け」、「多額の借財」を理事に委任することができないこととされていますが(第90条(財団は第197条において準用)、理事会の承認が必要となる資金調達や設備投資を「資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類」に記載することでよいと考えられます。
何が「重要」かについては、各法人の実情に応じて判断する必要がありますが、判例では、会社に係るものになりますが、「当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべき」とされています。
とはいえ、具体的な判断には困難を伴いますし、個々の事案によって、理事会承認の要否の判断がまちまちになることは避けるべきですので、金額基準を設け、一定の金額を超えるような借入、財産の購入や処分を行う場合には理事会の決議が必要(逆にいうと、一定金額以下の場合、代表理事又は業務執行理事の決裁で可能)といったような形で、各法人の中で、理事会への付議基準等を定めておくべきでしょう。
また、事業計画等を行政庁に提出する際に、認定法施行規則第37条の規定に基づき、本書類も含め、理事会(社員総会又は評議員会の承認を受けた場合には、当該社員総会又は評議員会)の承認を受けたことを証する書類(議事録)の添付が求められているため、重要な資金調達及び設備投資の有無に関わらず、「資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類」について、理事会(場合によって、社員総会又は評議員会)の承認が必要となります。
この理事会等における「資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類」の承認漏れは、立入検査においてもよく指摘されている事項ですので、形式的なことではありますが、漏れのないよう、ご留意ください。
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