内閣府では、令和5年9月27日から10月26日までの間、公益認定法施行規則改正に関するパブリックコメントを実施し、12月4日に結果を公表しました。
今回の改正のうち、第48条第2項の「公益目的増減差額」への「その額が零を下回る場合にあっては、零」との括弧書きの追加については、定期提出書類別表Hにおいて、公益目的増減差額(1欄)がマイナスとなった場合に零と記載することとする「定期提出書類の手引き(公益法人編)」の令和3年6月の改定に対応するものです。
これまで、「手引き」の改定には法的根拠がなく、都道府県によっては独自の運用を行うなど、現場において混乱が発生していましたので、解釈の明確化が図られるという面では一定の評価ができるものと思います。
しかし、意見募集において示された公益目的増減差額のマイナスが継続している法人が公益目的事業に対する寄附を受けた後、認定取消しを申請することで、当該寄附のうち公益目的増減差額のマイナスに相当する額を自由に使用・処分するできることとなるという事例については、確かに不公正な結果ではありますが、このような悪質ともいえる事例をもって全体の取扱いを変更することが果たして適切なのか疑問を感じざるを得ません。
例えば、パブリックコメントにおいては、複数の方から、外部借入やリースにより公益目的保有財産を取得した場合、公益目的取得財産残額が実態以上に増加し、当該公益目的保有財産の耐用年数が経過した際に、残存価額が零となっているにもかかわらず、取得価額に相当する公益目的取得財産残額が残ってしまう不合理な事例が示されていました。
これらの意見に対する内閣府の回答は「お示しいただいた事例等について、今後の制度運用に当たり参考にさせていただきます。実際に公益認定の取消し等があり、公益目的取得財産残額が実態以上に増額又は減額されていることが判明した場合には、認定法施行規則第50条に従って適正な額に調整することとなります。」というものです。
この点、パブリックコメントの結果公表と同時に「手引き」も改定されており、別表Hの説明に「認定取消し等の際に、実態以上に公益目的取得財産残額が加算/減算されている場合に当該金額の調整が必要となる場合には法人において適切に計算書類等の証憑の保管をお願いいたします。」との文言が追加されました。
しかし、毎年度、別表Hを作成することで、公益目的取得財産残額を把握し、行政庁において確認することに意味があるのですから、いざ認定取消しとなった段階で実態として適正な額はいくらか、また、それを示す証憑は何かという判断を法人に求めるのは酷であると言わざるを得ません。
来年度には公益法人制度の改革が予定されており、それまでの過渡的な取扱いではありますが、内閣府には、新制度における公益目的財産残額が適正に算定されるよう、パブリックコメントにおいて寄せられた意見に耳を傾けていただくことを切に望みます。
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