2017年6月の地方自治法改正による内部統制制度の導入については、2020年4月以降、全面的に適用され、強制適用となる都道府県及び指定都市のみならず、努力義務とされている市町村の中でも、主に中核市レベルの団体では内部統制制度の導入に向けた取組みを進めている事例も見受けられるようになってきました。
もともと、地方自治体における内部統制制度に関する議論は、2006年12月の地方分権改革推進法の制定から始まる第二次地方分権改革の進展と軌を一にして展開してきました。第二次地方分権改革は、地方に対する規制緩和、地方への事務・権限の移譲などをその内容とするものですが、一方で、2008年次からの会計検査院の検査により不適正な予算執行が明らかになりました。
地方への事務・権限の移譲を進めるためには、不適正な予算執行を防止するための自治体内部の仕組みを整備し、住民からの信頼を得ることが必要不可欠であり、これを達成するための手段として内部統制に関する議論が10年近い期間にわたって行われ、制度化されるに至ったものです。
一方、地方自治体においては、条例、規則、要綱、マニュアル等々により、既に上席者の決裁など、事務手続きの仕組みが厳格かつ網羅的に整備されており、なぜ、内部統制制度という新たな取組みが必要となるのか、疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
確かに、内部統制制度の導入が既存の決裁等の仕組みに屋上屋を架するだけの結果になるのであれば、その取組みは地方自治体にとってむしろ無駄な作業となり、その疑問はもっともなものといえます。しかし、現状の事務手続きにおけるチェックの仕組みが何のために(どのようなリスクに対応するために)設けられているのか、重複する手続きはないかなど、体系的に確認する作業だと考えるとどうでしょうか。
予算執行の適正化と事務の効率化の両立につながることも考えられますね。重要なことは、内部統制制度の導入は、予算執行の適正化という目的達成のための手段であり、手段の整備に過大なコストをかけることは避けるべきだということです。
総務省から「内部統制ガイドライン」が公表されていますが、広範かつ大量の事務を行う都道府県及び指定都市と努力義務とされている市町村では自ずと内部統制制度の導入のあり方は異なってきます。「ガイドライン」があるとどうしてもその通りにしなければならないと考えてしまいがちですが、自団体に見合った検討を進める必要があり、そのためには内部統制に対する正しい理解が必要となります。
そこで、今回、本コラムにおいて、【自治体内部統制シリーズ】と題して、内部統制の基礎概念から地方自治体における特徴、留意点などについて、連載を開始することといたしました。この連載が、地方自治体における内部統制制度導入に向けた検討の一助となれば幸いです。
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