内閣府公益認定等委員会に設置された「公益法人の会計に関する研究会」の令和2年度の報告書が、「令和2年度公益法人の会計に関する諸課題の検討結果について」として取りまとめられ、第476回公益認定等委員会(令和3年3月19日開催)において了承されました。
令和元年度において、「正味財産増減計算書」から「活動計算書」への名称変更及び事業及び管理費の形態別分類の集約化と機能別分類について、次年度以降検討するとされていたことを受け、令和2年度は、活動計算書への名称の変更に伴い検討すべき項目の整理が行われました。報告書において提示されている論点と検討の方向性を要約すると、下記のとおりです。
論点 |
方向性 |
①名称変更に伴い、記載内容の変更を行うか名称の変更のみとするか。 |
名称の変更に伴い内容の変更を検討すべき。 |
②指定正味財産から一般正味財産への振替の会計処理について、現行のままとするか、廃止するか。 |
振替の会計処理を廃止する方向で検討すべき。 |
③純資産(正味財産)の概念について、現行のままとするか、新たな純資産区分の概念を取り入れるか。 |
寄附者等の意思又は法人の機関決定により使途に制約が課されている「拘束純資産」とそれ以外の「非拘束純資産」という新たな区分の方向で検討すべき。 |
上記の論点②については、指定正味財産を財源とする資産の使途の指定が解除されるときに、指定正味財産増減の部から一般正味財産増減の部の収益に振り替えて、一般正味財産の部の費用と合算して対応させている現行の取扱いについて、このような振替を行わず、指定正味財産の増減の部における収益に対する費用として対応させる方式に変更する方向で検討するというものです。
また、論点③については、法人の機関決定により使途に制約が課されている資産の財源を一般正味財産に含めている現行の取扱いについて、寄附者等の意思により使途に制約が課されている資産の財源と合わせて「拘束純資産」に含める形で整理する方向で検討するというものです。
そして、このような方向性に基づき、次年度以降、事業及び管理費の形態別分類の集約化等の論点も含めて検討を進めていくこととされました。報告書においても、「中期的な検討」や「慎重な検討」という表現が見受けられ、すぐに各公益法人における対応が必要になるというものではありません。しかし、実際に会計基準の改訂に至った場合には、公益法人の経理実務への大きな影響が想定されますので、各法人の役職員におかれましては、令和3年度以降の研究会における検討状況を注視される必要があると考えます。
また、報告書には、収益認識に関する会計基準の適用及び子会社株式、関連会社株式を保有する場合の実質価額の注記についての検討結果についても記載されています。この点、収益認識に関する会計基準の公益法人への適用については、令和3年4月以降の企業への適用状況及び公益法人における収益認識の実態も踏まえて検討すべきこと、子会社株式、関連会社株式を保有する場合の実質価額の注記については、今後、公益法人を取り巻く状況を踏まえた別途のタイミングで導入を検討することとされており、すぐに対応が求められるものではありません。
PICK UP NEWS一覧へ