今回は、私立大学の監査とその根拠法令について説明します。
1.私立大学の監事監査
私立大学では監事を2名置き、業務監査と財産の状況についての監査を行うこととなっています。根拠法令は以下のとおりです。
(監事の設置)
私立学校法第35条第1項 学校法人には、役員として理事五人以上及び監事二人以上を置かなければならない。 |
(監事の業務)
私立学校法第37条第3項 監事の職務は、次のとおりとする。 一 学校法人の業務を監査すること。 二 学校法人の財産の状況を監査すること。 三 学校法人の業務又は財産の状況について、毎会計年度、監査報告書を作成し、当該会計年度終了後二月以内に理事会及び評議員会に提出すること。 |
2.私立大学の会計監査人による監査
私立学校振興助成法に定める経常的経費に対する補助金の交付を受ける学校法人は、学校法人会計基準により会計処理を行い、貸借対照表、収支計算書その他の財務計算に関する書類を作成するとともに、当該書類について所轄庁の指定する事項に関する公認会計士又は監査法人の監査報告書を添付しなければなりません。根拠法令は以下のとおりです。
私立学校振興助成法第14条第1項 第四条第一項又は第九条に規定する補助金の交付を受ける学校法人は、文部科学大臣の定める基準に従い、会計処理を行い、貸借対照表、収支計算書その他の財務計算に関する書類を作成しなければならない。 第2項 (省略) 第3稿 前項の場合においては、第一項の書類については、所轄庁の指定する事項に関する公認会計士又は監査法人の監査報告書を添付しなければならない。ただし、補助金の額が寡少であって、所轄庁の許可を受けたときは、この限りでない。 |
3.私立大学における監事監査と会計監査人による監査の関係
国立大学においては、監事監査と会計監査人監査は、独立行政法人通則法への読替えはあっても、いずれも国立大学法人法を根拠法令としています。しかしながら、私立大学においては、監事監査は私立学校法、会計監査人監査は私立学校振興助成法と、その根拠法令が違います。
また、会計監査について、会計監査人による監査が財務計算に関する書類の監査であるのに対して、監事の監査は「財産の状況の監査」と言い回しが異なっています。
ここで、監事監査における「財産の状況」とは、一時点の財産状況だけではなく、収支の状況も含まれていると解するのが妥当であり、会計監査人の監査と同様、財務計算に関する書類が学校法人会計基準に準拠し、適正に作成されている点について監査することと思われます。
よって、監事による監査と会計監査人による監査の関係においては、国立大学と私立大学において違いはなく、監査上、監事と会計監査人は適宜情報交換を行い、効率的な監査を実施することとなります。
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