日本公認会計士協会は、2019年7月18日、公会計委員会研究報告第24号「地方公会計の論点と方向性」を公表しました。
この研究報告は、これまでの地方公共団体における財務に関する業務の中でどのように地方公会計が位置付けられたのか、また、地方公会計が各地方公共団体の政策課題の解決に役立ってきたのか、さらに、地方公会計による財務書類をマネジメントにどのように活用していくべきかについても検討し、実務及び制度上の課題とその対応策を取りまとめたものです。
地方公会計については、2014年に公表された「統一的な基準」による財務書類の作成が進められています。「統一的な基準」は複式簿記の導入及び固定資産台帳の整備を前提としており、従来の総務省方式改訂モデルと比較すると大きく前進しているといえます。そして、財務書類の作成に関しては、既に、全体の80.5%にあたる1,440団体において、平成29年度決算に係る一般会計等財務書類が作成されています。
しかし、依然として財務書類から得られる情報の活用については、一部の先進的な自治体に限られているという印象を受けます。その一因として、「統一的な基準」による財務書類を作成する初年度の開始貸借対照表の作成において簡便的な取扱いが認められている部分があることも挙げられると思われます。
例えば、開始貸借対照表作成時には、既に耐用年数が過ぎているものは原則として資産として計上しないこととされていますが、このような老朽化が進んだ資産は、公共施設のマネジメントにあたっては、むしろきちんと調査・把握すべきものであるといえます。
この点、本研究報告においても、固定資産台帳の精緻化のため、改めて耐用年数が経過した固定資産を調査し固定資産台帳に計上することが望まれるとしています。
このような公共施設マネジメントにおける活用のほか、本報告書には、セグメント別財務情報などが取り上げられていますが、いずれも、活用にあたって必要となる情報が財務書類に適切に反映されるよう見直しが必要な事項について、実務的な観点から整理が行われたものです。
公会計の取組みにおいては、財務書類を作成したら終わりということではなく、作成する目的について常に念頭に置く必要があると考えます。
総務省の研究会に加え、本研究報告が地方公会計の更なる進展につながることを期待しています。
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