前回の本コラムでは、①に関連して、中長期的な収支均衡、従来の特定費用準備資金よりも使い勝手のよい「公益充実資金」の創設及び遊休財産の上限額の予見可能性の確保の方向性についてご説明いたしました。これらは、公益法人の運営の自由度が高まる方向での改正になりますが、一方で、②に関連して、各法人の負担が増える可能性のある改正項目があることにも留意する必要があります。
まず、会計面では、現在は、収益事業等からの利益の繰入れが50%の場合に、貸借対照表内訳表の作成が求められていないところ、全ての公益法人に対し、公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計に区分した貸借対照表内訳表の作成を求める旨、記載されています。
もちろん、現在でも、複式簿記により、正味財産増減計算書内訳表は作成されているはずですが、貸借対照表内訳表を作成されていない法人では、システム上の各会計区分の預金残高がマイナスになっているなど、そのままでは開示できない状況になっていることも多いのではないでしょうか。
この点、経過措置や行政による支援策も検討されているようですが、何らかの対応が求められることは間違いありません。(ただし、公益目的取得財産残額を計算する別表Hについては、貸借対照表内訳表を基礎とする簡素な把握方法とする方向で検討するとされており、一概に負担増となる面ばかりではありません。)
また、ガバナンス面では、理事会・監事等の機能強化のため、外部理事・監事の導入や評議員の選任について選定委員会方式を推奨するほか、会計監査人の必置の基準を現行の「収益1,000億円・費用損失1,000億円・負債50億円以上」から「収益100億円、費用損失100億円・負債50億円以上」とすることを検討するとされています。
新公益法人制度の施行は2年後の2025年が目途とされていますが、2006年の制度改革以来の大がかりなものであり、法令、ガイドライン、定期提出書類、FAQ、会計基準など、広範囲にわたった改正が必要となります。
その意味では、2年間という期間は決して長いものではなく、内閣府においては、「最終報告」を受けた具体的な改正内容を早期に確定し、公益法人への丁寧な周知に努めることが求められます。
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