平成31年3月12日、「内閣府公益認定等委員会 公益法人の会計に関する研究会」より、「平成30年度公益法人の会計に関する諸課題の検討の整理について」(以下「30年度報告」といいます。)が公表されました。今回は、その主な内容についてご紹介いたします。
30年度報告は、「1.これまでの取り組みの振り返り」、「2.29年度報告のフォローアップ」、「3.今後取り組むべき課題について」の3項目から構成されています。まず、「1.これまでの取り組みの振り返り」では、公益法人へのアンケート結果を踏まえ、財務三基準や公益法人会計基準に関してこれまでの取り組みの成果の検証が行われています。
次に、「2.29年度報告のフォローアップ」に記載されている項目は以下のとおりです。
〇遊休財産の算定
いわゆる6号財産から生じる果実を漫然と蓄積している法人が散見されることを踏まえ、29年度報告では、控除対象財産から生じた果実の取扱いについての対処方針が取りまとめられました。これを受け、内閣府において、認定規則第22条第3項第6号に「果実については、相当の期間内に費消することが見込まれるものに限る」との文言を追加する改正について、3月中に公布・施行する作業が進められています。
〇「為替差損益」の科目例示及び為替差損益と評価損益の関係
29年度報告において記載が明確でなかった外貨建投資有価証券について及び減損損失が発生した場合についての整理が行われています。その取扱いについては、現在、日本公認会計士協会がパブリックコメントとして公表している「公益法人会計基準に関する実務指針」において、一般正味財産を財源として保有する外貨建有価証券の決算時の会計処理について実務上の指針となる事項が記載されています。その内容をまとめると以下のとおりです。
区分 |
会計処理 |
|
満期保有目的の債券 |
経常増減の部の為替差損益 |
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満期保有目的の債券並びに子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券 |
市場価格あり |
経常増減の部の評価損益等 (※売買目的有価証券の場合は、経常増減の部の有価証券運用損益) |
市場価格なし |
経常増減の部の為替差損益 |
|
時価の著しい下落又は実質価額の著しい |
経常外増減の部の投資有価証券減損損失 |
〇別表H簡便版
時価評価資産の価額を正確に記載するためその記載要領の見直しを進める必要が明らかになったため、事務局において必要な作業を進めるとのことです。
最後に「3.今後取り組むべき課題について」においては、以下の項目が取り上げられています。
〇比較的早期に検討すべき又は検討を開始すべき課題
・注記における有価証券評価損益等の内訳の区分開示
・有価証券評価損益の計上に関する洗替法と切放法
・指定正味財産の明確化
〇中期的に検討すべき課題
・収益認識に関する会計基準の適用
・子会社株式、関連会社株式の実質価額の注記
・「正味財産増減計算書」から「活動計算書」への名称変更
・事業費及び管理費の形態別分類の集約化と機能別分類
以上のように、今回の30年度報告はこれまでの成果の振り返りと今後検討すべき課題の整理が中心であるといえます。
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